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花に酔う
第4章 椿 *
「……ごめん。
手紙、燃やしちゃったよ」
腕の中の彼女に向かって呟いた。
「最期ぐらい……独り占めさせて」
その額から頬にかけてを指先で辿る。
「いいよね……?」
何も答えない彼女に。
僕は自分の願いを告げた。
……最期ぐらい。
彼に邪魔されたくない。
君を手に掛けた理由に彼の存在はいらない。
すべて、君を欲した僕がしたこと。
誰のせいでも誰のためでもなくすべて僕の意志でしたこと。
そこには僕と君の関係しか存在しないのだと。ふたりのあいだだけの出来事なのだと――――そうしたかった。
これで君の一生に僕の存在は永遠に刻まれた。
同じく、僕の一生にも君の存在が。
君を殺めた者として。
僕に殺められた者として。
……僕たちはいつまでも。
そうやって繋がり続ける――――。
僕のしたことはたとえ間違いだったとしても。
君は言ってくれたから。
あのとき……その唇で伝えてくれたから――――ありがとう、と。
だから。
……だから僕はもうそれだけでいい。
君がそう思っていてくれるなら。
誰にも分かってもらわなくていいんだ。