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花に酔う
第3章  金木犀 * 


けれど。彼女は違ったようで。
あれから何度も、ネットでそのPVを見るようになった。


また見てるの? と、そう聞けば。
だって曲が気に入っちゃったんだもん、と。


確かに。
なんというか……どこか退廃的な雰囲気の、その静かな楽曲には僕も惹かれた。
その、縛られた少女の姿さえ、何も違和感を感じることなく見られる。


――きれいだよね。この女の子も。


彼女はいつもそう呟く。
その映像を見ると。


でも、僕からしたら。
PVには合っているとは思うけど、微動だにしなさすぎる無表情の少女はなんだか少し怖い感じもして同意はしかねた。


――私は好きだな。


僕のそんな言葉にも。
彼女は小さく笑いながら、そう口にする。
そしてまた、それを見続けるのだ。
すっかりはまっちゃった、そう呟いて。


そんなに好きなら――――と。
何気なく、口にした


“ 同じように縛ってあげようか ”


彼女はきょとんとした顔で、僕をしばらく見つめ。
それから、吹き出すように笑い出し、言った。


――やだ。
私、そんな趣味ないよ。




そう、このときはまだ。
彼女はそんなふうに言っていたんだ――――。





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