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花に酔う
第3章  金木犀 * 


そしてその日――――。


僕が仕事から帰ると。
お帰りなさい、と。
大好きな可愛い笑顔で迎えてくれた彼女。


そのとき。
ふ……と、不意に何かが香った。


彼女から? と思った僕は、抱き寄せたその身体に顔を埋めるようにする。
……けれど、どうもそうではないようで。
彼女の香りと、今感じた香りは異なっていた。


「なあに?」


ふふ、と笑う彼女に。
僕は首を振り、何でもないと答える。

彼女に促されるままに中へと進むと。


「あ」


また香った。


「これ、何の匂い?」


思わず口にすると、彼女はまた笑って。
これだよ、と。
テーブルの上のガラスの器を指さす。

よく見ると、水が張られたその器に、黄色い小さな花がいくつも浮かべられていた。



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