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花に酔う
第3章 金木犀 *
その静けさを破ったのは、彼だった。
「……まあでも、軽い気持ちで試してみようよ」
そんな、引かない言葉で。
「……っ、でも私、痛いのはほんとやだ。
そういうの、好きじゃないから……」
「分かってる。僕だってそんなのに興味はないよ」
ははっ、と。
私の発言を一蹴して。
「ただのお遊び、でしょ?
そういうのいま流行ってるじゃん」
確か……と、何か思い出そうとするかの
ように目を細めて。
やがて、ああ、と小さく笑う。
「そう――――ソフトSM、って言うんだっけ?」
ね? と……。
私の大好きなひとが、そんなふうに私に聞く姿。
内容が内容なのにきゅんときてしまうのは、条件反射とでもいうべき反応なのか。
「……ほんとに、痛くしない……?」
普段、基本的に無茶なことは言わない彼のそんな姿に、ほだされてしまったかのように私の心は受け入れる方向へと動いていた。
「信じて?」
その言葉に、とうとう私は。
「じゃあ……ちょっとだけ、だよ?」
あまり気が進まないけど、そこまで言うならその願いを受け入れてあげる、とでもいうかのように答えた。
本当は心の中に生まれ始めていた、好奇心?……緊張?
よく分からないどきどきを、隠しながら――――。