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花に酔う
第4章  椿 * 


出会ってしまった、彼女と彼。


僕が気付かないはずがない。
彼女の心の変化に。
ずっと見てきたんだから──彼女だけを。


やがて彼女は。


誰にも言わないでね、と前置きして。
好きなひとができた、と僕に告げた。


彼女のことが好きな僕に、他の男が好きだと。
こんな気持ちははじめてと、ずっと両想いだと思いこんでいた僕に。


へえ……と、無表情のままの僕に、初めての感情とやらに浮かれた気分の君は気付かない。
彼への感情をひたすらに語り、しまいには僕に協力を仰いできた。


お願い、と顔の前で手を合わせる。
その、確信犯のような上目遣い。


……うん、と。


小さく笑う僕に、飛びつくように抱きついてくる華奢な身体。


……何で。


気持ちが僕にはないと間接的に告げておきながら、何でこんなふうに僕にその身体を寄せてくるのか──。


僕の気持ち、本当に気付いてないの?
それとも、知らないふり?
僕の動揺、全然気付いてないの?
それも、見て見ぬふり?


……そうやって、いつも。
どこまでも、君は残酷で。



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