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花に酔う
第4章  椿 * 


過ぎ行く年月。
より深まりゆくふたりの関係。


彼以外はもう考えられない──頬を赤らめ、幸せそうに呟く彼女の姿をもう何度見ただろう。

君以外なんてもう考えられない──そんな自分の気持ちは今まで一度も口にできてはいないのに。


もはや絶望しかないこの想い。
それでも彼女へのそれから逃げられない自分に、何度自嘲気味の笑みを浮かべたことだろう。


彼女への愛。
彼への嫉妬。

自分への苛立ち。
そして、苦しさ。

叫び出したくなるような衝動にかられたことも、一度や二度ではない。

いっそもうどこかへ消えてしまおうか。
彼女から遠く離れた場所へ行ってしまおうか──ひとり苦しさに惑うときに思うそれらは、いざ彼女を前にすると途端になりを潜めて。


無理だ。


……反対に、そんな思いに囚われる。


つらくても、離れられないと。
苦しくても、彼女の近くにいたいと──。



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