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花に酔う
第4章 椿 *
彼女の絶望。
彼を喪ったことに耐えられないとでも言わんばかりのその取り乱し方。
抱き締める僕の腕を振り払い。
半狂乱になって、泣き叫ぶ。
無理矢理に押さえつけようとすれば。
僕の胸を殴り、そこから逃れようと暴れ。
そしてまた、彼の身体に縋りつく。
……僕は、いったい何てことを願ってしまったんだろう――――……。
彼がいなくなればいいのにだなんて。
消えればいいのにだなんて。
彼女の気持ちなど、何も考えずにそんなことを。
彼がいなくなったら彼女は僕を見てくれるはずだなんて――――いったい何を、僕は。
……こうやって、彼女のその姿を見せられて。
そんな簡単なことじゃなかったんだ、って思い知らされて。
『……ごめん……』
思わず唇から漏れたその言葉。
今の彼女にはきっと聞こえてはいない。