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花に酔う
第4章  椿 * 


そんな彼女の感情はひどく不安定で。


黙ったまま何時間もただ座り込んで。
何を考えているのか……何も考えていないのか、わからないようなその表情。

かと思うと、急に叫び出して。

どうして、と。
どうして自分だけ逝ったの、と。
彼への想いを口にしながら激しく泣きじゃくる。

その身体を抱き締めて落ち着かせようとすれば、さわらないでと僕をも拒絶する。

……やがて感情が落ち付けば、今度は僕に泣きながら謝る。

分かってるよ、とその背中をさすれば。
僕にしがみつくようにして、また泣く。


苦しい、と。

どうして私だけが生きているの。
どうしてあのひとはいないの。
どうすれば会えるの。
これからどうやって私は生きていけばいいの。

……助けて、と。


ひたすらに口にするそんな言葉。
それはすべて、彼への想いゆえのもの。

彼女が泣き疲れて眠るまで続けられる、愛の告白――――。



そのあと。
いつも僕は眠った彼女の頬を撫で。


……ごめん、と。


それだけをまた、呟くのだ。



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