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花に酔う
第4章 椿 *
僕がいる。
ずっと僕がいるから――――そう、何度も何度も彼女に向かって話し続け。
相変わらず不安定なその心をどうすれば平穏に導くことができるんだろうと。
本当にそんなことできるんだろうかという不安をも感じつつ、それでも。
……それでも、彼女を諦められない僕は。
彼女を抱き締め。
その腕からいなくなればすぐに分かるように、いつしかその身体を抱き締めながら眠るようになった。
彼女も、拒まなかったから。
だからそれからはいつもそうやっていて。
眠りが浅いのか、夜中に不意に泣き出す彼女を。
彼の名を呟いて泣き出す彼女の頭を自分の胸に導いて。
僕がいる、と何度も口にする。
……彼女が再び眠りにつくまで。
その呼吸が規則的なものへと変わるまで。
愛おしい彼女を。
その柔らかな身体を、ただ、静かに抱き締めながら――――。