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花に酔う
第4章 椿 *
「――――……!」
視界が滲んで、彼女の姿がぼやけた。
咄嗟に俯いて、衝動を堪えるように息を吐く。
……だって。
どれくらい振りだろう。
笑った顔を見るなんて。
思い詰めたような顔。
泣いている顔。
最近はそんなのばかりだったから。
もう一度深く息を吐き。
ちらりと彼女の方に視線を遣った。
落ちている椿の花を拾い、庭の一か所へと集めている姿は、子供の頃の彼女のその記憶に重なる。
……幼い頃から、僕は彼女だけだった。
彼女以外のひとを好きになったことなんてない。
明るくて、優しくて。
少しわがままなところも魅力的で。
彼女の望みなら何でも叶えたいとまで思える、僕の最愛のひと――――。