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花に酔う
第4章 椿 *
彼女にとっての僕は違ったけど。
ずっと一緒にいても、僕は彼女の中では幼馴染み以上にはなれなかったけど。
僕は恋人という存在にはなれないのだと――――はじめて現実を突きつけられたあのときの衝撃は今も忘れられない。
それでもいつかはとわずかに抱いた望みに反して、ふたりの仲は誰も入り込めないほど深いものとなり。
もう……諦めざるを得ないって、自分に何度も言い聞かせて。
でも、心は言うことを聞かなくて。
僕は彼女の姿を目で追いながら。
そんな、今までのことをなぜか思い出していた。
長い長い、片思いを。
幼いときから今も変わらずずっと胸の中にある、この感情を。
消そうとしても無理だった、彼女への恋心を。
「……寒くない?」
ほぼ集め終わったその様子に、僕は声を掛ける。
振り向いて首を振り。
ゆっくりと、廊下に立つ僕に向かって歩いてくる彼女。