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花に酔う
第4章  椿 * 



――――え?


今、何て……?



黙って見つめると。
彼女は、静かに振り返り。
そのまま僕に背中を向けるようにして、また庭を見た。


「昔から、ここ……好きだったな」


静かに話し出した彼女。


「ここでいっぱい遊んだよね」


いったい何を話そうと言うのか。
得体の知れない不安に心臓が早鐘を打ち始めた。


「この季節が一番好きだった。
……この花が、見られるから」


嫌な予感が……する。
さっきまでの穏やかな気持ちが。
抱いていた希望が。
何だか一瞬にして消え失せてしまったかのような。


「綺麗に咲いて……少しすると花ごと落ちちゃうのが潔いかんじがして。
……何だか惹かれてた」


潔い、って――――。

思わず、ごくりと唾を飲み込む。


何。
いったい何なの。

さっきから、最後とか。
潔いとか。

いったい何が言いたいの――――。


「……見れてよかった」


僕の動揺をよそに。
またそんな言葉を。



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