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花に酔う
第4章 椿 *
「……止めないでほしいの」
ぽつりと彼女は呟いて。
少ししてから、ううん……と。
今の自分の言葉を打ち消したいのか首を振る。
「もう、放っておいて――――」
ゆっくりと、振り向きながら。
ようやく僕の方を、見ながら。
「今までずっと……ごめんね。
迷惑ばっかりかけちゃった……」
彼女の言葉に、僕は何も返せない。
それでも、こみ上げてくる感情に表情が歪んでしまっているだろうことは分かった。
それは自覚すれば余計に。
その感情に呑み込まれていき。
は……、と思わず息を吐くと。
今度は涙腺まで緩んできてたまらず俯いた。
唇を噛み、必死で堪える。
「……そうしたかったんだ、僕が」
そして、発した言葉。
少し震えていた。
「それ……自分のためでもあったから……。
だからそんなふうに思う必要なんてない」
彼女を支えたいという気持ちももちろんあった。
でも、自分の中にある罪悪感を……彼女を支えることで。少しでも助けることで、なくせればというずるい気持ちもなかったとは言えなかった。
だから感謝される筋合いなんて本当にないのに――――。