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花に酔う
第4章  椿 * 


そんな願いを込め、抱き締める腕をそっと緩めた。
彼女の両肩に置いた手。
少しだけ力を込め、僕の身体から彼女を離させた。

俯いたままのその顔を、覗き込む――――。


「……う」


途端に聞こえた、そんな呻き声。
それはやがて、嗚咽へと変わって――――。


「え……」


戸惑う僕に、彼女は両手で顔を覆って。
……声を震わせながら呟いた。


「……っ……ごめ……」


ひく、としゃくりあげ。
もう一度。


「……ごめん……ね……」



その言葉は何に対して?

今まで気付かなかったということ?
それとも想いには応えられないということ?


頭の中のそんな疑問は。
考えるまでもなく、答えに行き着く。


……たった一言なのに。


彼女を理解しすぎている自分が……今、無性に哀しく思えてしまうほど。
僕の想いは迷う間もなく拒まれたのだと――――分かってしまった。


黙って、見上げた空。

さっき見たときと変わらず。
そこはやっぱり真っ青で美しかった。


……僕の気持ちは、天と地ほどに違っていたのに。





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