この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
花に酔う
第4章 椿 *
そんな願いを込め、抱き締める腕をそっと緩めた。
彼女の両肩に置いた手。
少しだけ力を込め、僕の身体から彼女を離させた。
俯いたままのその顔を、覗き込む――――。
「……う」
途端に聞こえた、そんな呻き声。
それはやがて、嗚咽へと変わって――――。
「え……」
戸惑う僕に、彼女は両手で顔を覆って。
……声を震わせながら呟いた。
「……っ……ごめ……」
ひく、としゃくりあげ。
もう一度。
「……ごめん……ね……」
その言葉は何に対して?
今まで気付かなかったということ?
それとも想いには応えられないということ?
頭の中のそんな疑問は。
考えるまでもなく、答えに行き着く。
……たった一言なのに。
彼女を理解しすぎている自分が……今、無性に哀しく思えてしまうほど。
僕の想いは迷う間もなく拒まれたのだと――――分かってしまった。
黙って、見上げた空。
さっき見たときと変わらず。
そこはやっぱり真っ青で美しかった。
……僕の気持ちは、天と地ほどに違っていたのに。