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花に酔う
第4章 椿 *
「……どうして」
たまらず、零れた彼女への問い。
どうして僕じゃだめなんだろう。
彼がいない今、彼女には僕しかいないと思っていたのに。
僕を頼り、僕に縋る日々の中で、今度こそ僕を選んでくれるものとばかり思っていたのに。
どんなに時間がかかろうと、その日が来るなら――――そう思いながら抱き続けたこの気持ち。
それなのに。
彼女は僕を選ぶつもりがないと。
あくまでも、彼を選ぶと。
僕を選ぶより、死を選ぶと――――。
……つまりは。
そういうことで。
「……どうして僕じゃだめなわけ……?」
ずっとそばにいたのに。
彼の代わりにすらなれないなんて……どれだけ、彼女にとって僕の存在って――――。
は……と漏らした息は、まるでそんな自分をあざ笑うかのようなものになり。
そっと彼女の肩から離した両手。
後ずさるように、身体の距離を置く。