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ラストチルドレン
第4章 零れていく砂のように・堕ちる暗闇

食事もせず、ただ置物のようにベッドに座る俺に珍しく母親が部屋に入ってきた。
俺の金を盗んだ、あの日から水商売だが働き出した。
朝帰りが多くなって、生活リズムが真逆だったけど、俺が謹慎になってからは、割りと顔を合わせていた。
Γどうしたん?そんな怖い顔して」
Γ退学になった……バイトがバレて……」
母親は少しばかり驚いた表情を見せたが、すぐに真顔になり。
Γそう。しょうがないね、学校行かなくていいなら早いとこ仕事見つけて働かないとね。生きるにはお金が必要なんやから。そんな顔しなくても、大丈夫。高校なんて義務やないんやから」
励まそうとしているのか、頭に手をポンッと置いてそれから抱き締めた。
Γ母さん、何もしてやれんけど。達巳の味方やから」
その言葉は、今までで一番母親らしい、優しさのある言葉だった。
Γ……ありがとう」
Γお腹空いたら、食べて。母さん、ご飯用意してくるわ」
部屋を出ていく母親の背中を見送る。
母親も、こんな俺を見たのは初めてだったのかもしれない。
あんなに優しい母親の顔を見たのは、何十年振りだろうか
。
そんなことを思ったら、また涙が出てしまった。
このままじゃ、いけないよな。
楓の事も、自分自身のことも。

