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ラストチルドレン
第1章 拾われた体・あたしの気持ち

HRが終わっても、達巳は現れなかった。
鞄はあるのに、居ない。
あたしは、摩耶に気分が悪いからサボると告げて教室を出た。
摩耶はきっと、あたしがショックを受けたからだと思ったのかついてこなかった。
屋上へと続く階段。
意味もなく音を一段と立てて昇った。
少し古びた扉を開ければ錆び付いた金属の音が響いて、視界はあたしの気分とは裏腹にスカイブルーの空で覆われた。
柵のある場所まで一直線に歩けば、寝そべっている達巳が見えた。
隠れるように、屋上にあるブオンと音のする機械の裏で瞼を閉じている達巳。
いつもなら、あたしを呼んでここに来る達巳が一人で居る違和感。
何故だか少し泣きたくなった。
あたしは、黙って達巳の隣に座る。
フワッと風に舞って香る達巳の香水。
この香りが堪らなく好き。
達巳に包まれているみたいで、それはまるで母胎の中に居るみたいな安心感があって。
達巳は、やっぱりあたしにとって居心地のいい場所。
この屋上から見えるつまらない景色さえ、達巳と居れば悪くないとさえ思えるから不思議だ。
あと、二年間。
この屋上に居られるタイムリミット。
それは、同時に達巳の傍に居られるタイムリミット。

