この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ラストチルドレン
第4章 零れていく砂のように・堕ちる暗闇

◇
就職が決まってから初出勤の日はすぐだった。
朝5時、真新しい制服に腕を通す。
学生服とはまた違った特別感。
家から徒歩20分にある事務所へと歩きだす。
免許が無い俺は先輩の車で現場まで送られるらしい。
出勤時間より少し早めに事務所に着き、扉を開けると作業服を着たオジサンが煙草を吸っていた。
その風貌は、昔ヤンチャしてましたといった感じの強面だ。
大きく息を吸い込み、渾身の挨拶。
社会人は挨拶が基本だと、こないだ立ち読みした本に書いてあった。
「おはようございます」
90度に曲げた腰を元に戻すと、オジサンは返事の代わりに白く濁った煙を吐いた。
聞こえないわけがない、そう思いながら今度は真ん前まで来て挨拶をした。
「今日からお世話になります。秋山達巳です。宜しくお願いします」
「ああ?新人か。うるせんだよ。出勤時間まであと10分あるじゃねえかよ。黙って座っとけ!!」
物凄い眼光で睨みつけられ、俺は黙って空いてる席に座った。
何だか、更に憂鬱になってきた。
ボーッとしていたら、わらわらと作業服を着たお兄様方が事務所に入ってきた。
一気に緊張が襲う。
漸く、始まるんだ。
俺の社会人としての生活が。

