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ラストチルドレン
第5章 絶望の果てに・失った光

Γよぉ、達巳。いい加減金返せよ?」
すれ違う度、耳元で囁く郷田。
揉めたくなくて、ぐっと堪える。
これが毎朝の日課になった。
高峰さんに迷惑を掛けられないと思うと、今すぐ殴り付けたい気持ちを抑える為に拳を握るしか無かった。爪が食い込んで、その痛みで落ち着かせる。
Γ好き勝手言ってねぇで仕事しろよ」
Γ誰に口聞いてんだよ。仮にも年上だぞ?」
Γ……もういい」
何を言い返しても、減らず口を叩く郷田に構ってられないとシカトをしたこともあった。
だが、決まってそんな日は何かが起こる。
それは、こんな風に―――。
Γあれ!俺の財布がねぇんやけど!」
オロオロする高峰さん。ポケット、鞄をまさぐって必死に探していた。
Γ何処かで落としたんですかね?俺も探しますよ」
Γわりぃ。早く帰りたいやろうに」
Γ何言ってんすか!!財布無いと困るでしょ!」
仕事の間は鞄ごと預けるロッカーがある。
鍵もちゃんと掛かっていたのに、高峰さんの財布だけが姿を消した。
現場、その周辺。車、事務所。
考えられる場所を隈無く探すが見当たらない。
Γもういいよ、達巳。ありがとう。きっともう拾われてしまったんや。仕方ない」
Γでも、高峰さんロッカーに預けてたんすよね!?小銭だけ持って現場に来ましたよね!」
Γ大金入ってたから、今日は預けたんやけどな。それが失敗やったな。こないだから事務所の金無くなったり、やっぱり盗人がおるんやな」

