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ラストチルドレン
第5章 絶望の果てに・失った光
次のエリアは天井までもが水槽に囲まれたトンネルエリアだった。
見上げれば一面色とりどりの魚たちが優雅に泳いでいる。
魚のお腹が丸見えで少しグロイ子も居たけれど、それがまた面白い。
「あ、あれ達巳に似てる」
「どれ?」
「あれ!何て名前だろう…」
水槽近くに書かれた魚の一覧を見ると、エイと書かれていた。
「嘘!あんな俺平べったい顔してる?」
「そっくり!」
さっきの仕返しよ。フン。
案内通りに進めば、クラゲエリア、ペンギン、アザラシ、マンボウ、見るもの全てに目を奪われた。
生物の神秘。なんて自由で美しいのだろう。
あたしもこの水槽の中を自由に泳ぎたい。
何もかもから解き放たれて何も考えずただひたすらに。
「魚は自由でいいよな…」
そんなことを思っていたら達巳がふと、言葉を零した。
「俺もあんな風に生きていたいや。人間ってややこしい生き物なんか辞めてさ」
「達巳もそう思う?あたしも同じこと思ってた」
「魚は魚で大変なんだろうけどさ。羨ましく思えるよな」
人間は考える生き物だから、物事を複雑にしがちなんだ。
シンプルな答えほど見えなくなって遠回りをする。
余計な思考のせいでしなくていい苦労をする。
でも、人間が本能のまま生きたら世界は成り立たない。
時々、人間を辞めたくなるのは逃げなんだろうか?
自由を掴んでいるのはお前たちの方だと、水槽越しの魚は思っているのだろうか?

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