この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ラストチルドレン
第6章 貴方の居ない世界
高峰さんは、黙って話を聞いた。
もう、ブランコを揺らさずに地面に足をつけて静かに座っていた。
夜の静寂さの中、あたしの声だけが闇に消えていく。
Γ終わってなんかいないよ。達巳の中でも、楓ちゃんはちゃんと彼女だった。アイツは別れたくて別れたんじゃない。本心じゃなかったんや」
Γそうなんですか……」
Γあの日、達巳はちゃんと理由を話そうとしてた。一人で言う勇気がなくて俺に立ち会うようにって。だから、楓ちゃんは元カノなんかじゃないんよ」
ーーー楓ちゃんは達巳の最愛の人なんや
風が吹いた。
あたしの髪を揺らして、まるで達巳がここに居るような錯覚を起こす。
頭を撫でられたような気がした。
Γ達巳は楓ちゃんとやり直したかったんや。伝えられないまま、逝っちまったけど」
Γそれが聞けて良かったです。あたしは、まだ達巳の彼女なんだって……思えたから」
心がじんわり暖かくなる。
あたしの愛は、達巳に届いているだろうか。
達巳の愛は、今受け取ったよ?
もう、いいでしょ?
かくれんぼは終わりにしよ?達巳。
もう出てきていいんだよ?
あたし、頑張ったんだよ!
ねぇ、達巳……お願いだから。
会いに来てよ………。
Γ楓ちゃん……辛いな。受け止めろなんて言わんけど。吐き出しや?ちゃんと心の声…」
高峰さんは、あたしの頭を撫でた。
達巳のように優しくゆっくりと。
あたしは、また高峰さんの前で泣いた。
全部吐き出して、今日までの日々も。
これから先の不安も全部。
ワンワン泣くあたしに、黙って隣に居てくれた。
あたしの周りにいる人はどうして皆優しいのだろう。