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ラストチルドレン
第6章 貴方の居ない世界
「楓~飯行こうぜ!!」
噂をすれば、やってきた子犬系。
あたしはマキに翼くんを押し付けた。
「今日はパス。マキ、後は頼んだよ」
席を立つあたしに翼くんは吠える。
それを聞き流してあたしは中庭に向かった。
マキは今頃翼くんに猛アタックしてるだろう。
そう言えば、こんなこと高校でもあったなぁ。
摩耶が達巳を狙っていいかと聞いてきたことが。
あの時もあたしはどうぞ?って言ったっけ。
全然変わらない自分に苦笑する。
あの時はまだ達巳の事を恋愛として好きではなくて。
ただ特別な存在だって認識していた。
それが今じゃ、この様だ。
達巳を失って、あたしは何かを得られたのだろうか。
人は失うものがあった後、何かを得るという。
この世に意味の無い出来事はないとも。
だったらあたしが達巳を失った事にも意味があるのだろう。
何を得た?達巳が世界の全てだったあたしに。
どれだけ願っても神様なんか居なくて。
容易くあたしから奪っていった。
そんなこと望んでいない。
今でも空を見ると、返せ!と叫びたくなる。
あたしの達巳を返してよ。
心の中は未だに土砂降りだ。
中庭にあるベンチに腰掛けて、ただ空を眺める。
やっぱりあたしの心とは裏腹に今日も快晴だった。