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ラストチルドレン
第2章 捨てられた子供・気付かない親心

なのに、達巳と答えた途端。包丁がまな板を叩く音が止んだ。
「達巳君と二人で?」
「そうだけど?」
質問の意図が分からず正直に答える。
今まで達巳と出掛けた事が無いから驚いているのだろうか?
あたしだって、驚きだ。
こんな日が来るなんて思わなかったし。
呑気にそんなことを考えていたあたしに、母親は口を開いた。
「達巳君の噂…楓知ってる?」
「は?噂?」
突然何を言い出すんだろうこの人は。
達巳の噂なんて聞いたことが無い。
それなのに、母親は知ってると言いたげな顔をしてあたしを見つめる。
「最近、達巳君。繁華街でよく見掛けるらしいんよ」
「繁華街で?本当に達巳なん?」
繁華街は、電車で30分の距離にあって行こうと思えば行けるけど、あそこはどのお店も値段が高くて、あたしには手が出せないものばかり。
それに、昼間は静まり返っているけどキャバクラやホストクラブが軒を連ねる場所で高校生のあたしには縁の無い場所だった。
「お母さんもご近所さんの噂で聞いたんよ。もし本当なら達巳君、何をしに行ってるんやろね」
「バイトじゃないの?達巳、働いてる言うてたし」
「繁華街に高校生を雇うようなお店は無いんよ?」
そんなの知らないよ。
あくまで、噂。
きっとそれは達巳じゃないよ。

