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ラストチルドレン
第2章 捨てられた子供・気付かない親心
部屋で意味も無く携帯を開いたり閉じたりして、九時になるのを待った。
今朝のドキドキやワクワクでソワソワしているというより、母親の言った噂の話のせいだ。
早く達巳に会いたい…。
そう思っていたら、メールの着信音が鳴った。
ガバッと開くと、達巳からで着いたの一言が書かれていたから、あたしは荷物を持って階段を駆け足で降りた。
「あんまり遅くならんでや!夏やからって、危ない人もおるんやから」
「……ん」
気まずい空気が流れる中、短めに返事をしてサンダルを履いた。
あたしが怒ったからか、母親はそれ以上は何も言わなかった。
玄関を開けて、歩くと達巳が自転車に跨がって笑顔を見せている。
「おはよう、楓」
「おはよう、達巳」
気にしちゃ駄目だ。せっかくの達巳との海だ。
噂の話はチャンスがあれば、聞こう。
心の中に仕舞い込んで、あたしは達巳の自転車に跨がった。
達巳のお腹に腕を回して、背中に耳を当てる。
風の音と、爽やかな朝の香りが鼻を掠めて、それだけで気持ちがよかった。
ペダルを漕ぐ音と、達巳の息遣い。
会話は無かったけど、それがとても心地よかった。