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ラストチルドレン
第2章 捨てられた子供・気付かない親心

「海や!楓、海や!!」
「海やね。テンション高いな」
海が視界に入った途端に興奮する達巳。
自転車が少しバランスを崩して蛇行する。
「ちゃんと、運転してや!もう!」
怒りながら、でも少しだけあたしもテンションが上がる。
波の音と、磯の香り。
サーファーたちの声と、海の家から流れる爆音の音楽。
夏の海は、あたしたちを呑み込もうと口を開けて待っていた。
砂浜に降り立ち、自転車を止めた達巳はそのまま海まで走っていった。
小学生並の行動に、笑いが止まらなかった。
「楓ー!早く!」
「ちょっと、水着!」
服のまま、海に入ろうとする達巳を止めてあたしは着替え始めた。
戻ってきた達巳は、ニコニコしながらシャツを脱ぎ、ズボンを下ろすと海パンを履いてきたのかそのまま、また海に走る。
達巳の引き締まった体とオレンジの海パンが海に映えた。
白のビキニを着て隣に行けば、達巳が笑顔で水をかけるから、あたしも思いきりかけてやった。
「うへー!しょっぱ!海とか何年ぶりやろー」
「え!?達巳海行かなかったの?」
「誰も連れてってくれんかったしなー!それに高校生になったらバイトばっかりやったし」
「ふーん。そっか…」
何となく寂しそうに見えた達巳の笑顔。
あたしには、泣いているようにも見えた。

