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ラストチルドレン
第2章 捨てられた子供・気付かない親心


「だから、こうやって楓と海に来れて良かった」

「あたしもやよ!達巳、泳ごう?」

達巳が何を思っているのか知らないし、何を抱えているのかも知らない。

ただ、泣きそうな笑顔が見たくなくて…。

全部泳いで流れていけばいいのにと、あたしは思った。

綺麗な海では無いけれど、夏の日差しの下。

何も考えずあたしたちは自由を求める魚のように、どこまでも泳いだ。


「ぷはーっ。楓、腹減らん?」

「すいた!ご飯行く?」

「海の家、行くか!」

泳ぎ疲れて、あたしたちは昼食をとりに海の家へと歩き出した。

カレーの匂いが漂っていて、そう言えばここはカレーが名物だったと思い出す。

「カレーの匂い凄いな」

「うん。フフッあたし、カレーにしよ!」

「じゃあ俺はカツカレー」

達巳がサラリと、お金を払ってしまった。

財布を開けて千円札を渡そうとしたら止められた。

「俺が誘ったんよ?出させてよ」

「……ありがとう」

達巳のする行動が、あたしには少女漫画に出てくるシーンみたいに思えてドキドキした。

こんな風に誰かに奢ってもらったことも無いし、然り気無く座席を確保したかと思えばすぐにトレイを持ってカレーを運んできてくれたり、優しくされたこともない。

その全てが新鮮で、達巳だから余計にカッコ良く見えた。


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