この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ラストチルドレン
第2章 捨てられた子供・気付かない親心

「だから、こうやって楓と海に来れて良かった」
「あたしもやよ!達巳、泳ごう?」
達巳が何を思っているのか知らないし、何を抱えているのかも知らない。
ただ、泣きそうな笑顔が見たくなくて…。
全部泳いで流れていけばいいのにと、あたしは思った。
綺麗な海では無いけれど、夏の日差しの下。
何も考えずあたしたちは自由を求める魚のように、どこまでも泳いだ。
「ぷはーっ。楓、腹減らん?」
「すいた!ご飯行く?」
「海の家、行くか!」
泳ぎ疲れて、あたしたちは昼食をとりに海の家へと歩き出した。
カレーの匂いが漂っていて、そう言えばここはカレーが名物だったと思い出す。
「カレーの匂い凄いな」
「うん。フフッあたし、カレーにしよ!」
「じゃあ俺はカツカレー」
達巳がサラリと、お金を払ってしまった。
財布を開けて千円札を渡そうとしたら止められた。
「俺が誘ったんよ?出させてよ」
「……ありがとう」
達巳のする行動が、あたしには少女漫画に出てくるシーンみたいに思えてドキドキした。
こんな風に誰かに奢ってもらったことも無いし、然り気無く座席を確保したかと思えばすぐにトレイを持ってカレーを運んできてくれたり、優しくされたこともない。
その全てが新鮮で、達巳だから余計にカッコ良く見えた。

