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ラストチルドレン
第2章 捨てられた子供・気付かない親心

父親は帰りが遅くて、家に居た時間は少なくて情けない男の記憶に父親と遊んだという記憶は無い。
母親は、そんな父親でも愛していたのか。
文句も言わずに毎日飯を作って待っていた。
先に食べる情けない男。
母親はそんな男の顔を見ながら泣きそうな笑顔を向ける。
「早く、大きくなってやぁ」
母親の口癖だった。
いつか、大きくなって大人になったら。
母親を守ろう、寂しい思いはさせない。
そう決意した情けない男。
いつの間にか、家に居ない父親を恨むようになった。
年月が経ち、情けない男は小学校高学年になった。
伸び続ける身長に、一人満足し母親を守れる男になった気がして嬉しかった。
父親は相変わらず家にあまり帰らない。
母親が毎晩、寝室で泣いていたのは知っていたけれど聞かないフリをした。
情けない男の前では、母親は常に笑顔だったから。
毎食、情けない男がご飯を食べるとき母親は
「早く、大きくなってやぁ」
そればかり、繰返し言うようになった。
段々それは、呪いの呪文のように聞こえてきて怖かった。
食事をするのも苦痛になり、食べても吐いた。
それを母親が見つけると、優しかった母親の笑顔が消えて鬼のような形相で情けない男の首を締める。
「どうして、吐くの?早く、大きくなれって言ってるのに」
ああ、死ぬな。
情けない男は、ボンヤリ思った。

