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ラストチルドレン
第1章 拾われた体・あたしの気持ち
「帰ろう、楓」
午後の授業もほとんど寝ていた達巳。
どれだけ寝るんだ、と呆れる程。
あたしは、あたしで授業は真面目に聞いていなかった。
黒板の上を滑るチョークから出る粉を目で追ってみたり、先生の顔にあるほくろを数えてみたり。
前を向いて聞いているふりだけ。
たまに視線を外して、前の方に座る達巳の背中を見ると制服の汚れが気になってやっぱり授業どころじゃない。
真っ白なノートに今日も文字が並ぶことは無かった。
毎日、達巳はあたしと帰る。
あたしのことを達巳が呼ぶから。
理由は、それだけ。
だから、良かった。
それ以外の理由であたしが達巳の隣に居ることは出来ない。
他のクラスのギャルの子たちも達巳が好き。
いつだって達巳を狙っていて、あたしを邪魔だと思っている。
でも、達巳があたしを選ぶから。
誰も文句が言えなかった。
「何であたしと帰るの?」
一回だけ聞いたことがある。
達巳は、その質問に笑顔で答えた。
「飼っていた猫に似てるから」
笑ってしまった。そんな理由であたしと帰るのかと。
そんなくだらない理由で、他の子は負けたのかと。
二人で大笑いした。

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