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ラストチルドレン
第3章 壊れていく日常・守りたいもの

「おっちゃんは、一人なん?奥さんは?」
「早くに死んでしまったよ。俺を置いて逝きやがった不幸な女やったわ」
「そうなんや…」
アイスを受けとったが、気まずい空気が流れた。
「しんみりさせてすまんかった!小僧、彼女大事にしろよ」
「分かっとる!」
達巳とアイスを持ちながら、頭を下げてその場を去る。
奥さんが先に死んで残されたおじさんは、悲しみからどう立ち直ったのだろうか。
ボンヤリそんなことを思った。
「あ、おいし」
一口食べると優しい味がして、達巳のチョコ味も食べたくなった。
「達巳、一口ちょーだい?」
「お、おう」
グイッと差し出されたチョコ味のアイスがあたしの鼻に命中して、チョコの香りが広がった。
「あ、ごめん!」
「もうっ!えいっ!仕返しだ」
あたしも、達巳の鼻にバニラのアイスをぶつける。
白く染まる鼻が何とも間抜けだ。
「食べ物で遊んだら駄目やろ!」
「遊んでないし~達巳が先にしたんじゃん」
ケラケラ笑いあう。
夏の暑さでアイスはあっという間に溶けていく。
「早く食べんと!」
達巳に促されてアイスを食べながら歩く。
本当にカップルみたいなあたしたち。
達巳が堂々と肯定したから。
あたしは、達巳の彼女なんだという自覚が出来た。
それがなんだかこそばゆかった。

