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ラストチルドレン
第3章 壊れていく日常・守りたいもの


「俺、母親に縛られてる気がするんや」

「縛られてる?」

「居なくなっても、居ても、常にあの人から離れられない。ほっとけないっていうか」

「達巳は優しいからね」

きっと、どんなにひどい人でも達巳にとっては母親であることに代わりはなくて。

どんなにムカついても、どんなに酷い仕打ちをされても家族である以上、突き放せない。

優しくて、弱い達巳。

今すぐギュッと抱き締めて頭を撫でてあげたい衝動に駆られる。

今ここが外で無ければ、そうしただろう。

もどかしい気持ちを抑えるために、あたしは達巳から離れた。

「今日は送らなくて大丈夫!うちの母親に見つかるとややこしいから!またね、達巳」

「おう!じゃあ新学期に」

手を振り、背を向けた。

あたしは、きっとあの母親には勝てない。

達巳の心にはあの母親がずっと居て。

その悲しみも怒りも苦しみも救ってあげられない。

今も昔も、出会った頃からあたしはただ隣に居ることしか出来ないでいる。

達巳の為に、自分には何が出来るんだろう。

高校生のあたしは、ひどくちっぽけに思えた。

無力なんて、思いたくない…。

なのに、あたしはただの傍観者だった。



あの日も――――。



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