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呪いのしるしを、君の体に。
第8章 8
「やあ、来てくれると思ったよ」
かけて、と言われて、高槻の書斎に来たことりは
まるでラグジュアリーホテルのようなその部屋で
ふかふかの革の椅子に所在なく腰を下ろした。
高槻の部屋は、几帳面な性格が表れていて
無駄なものがなく、パソコン用の大きなデスクと大きなベッド
窓際には外を眺められるようにソファが置いてある。
その窓際のソファに座って、ことりは部屋の中を見渡していた。
ちょっと待っていて、と言われて
高槻はパソコンを何やら操作し始める。
パソコンの隣にあるプリンターが動き出し
何やら数枚紙を排出した。
その横顔だけ見れば、精悍な顔立ちの
美しい男性だった。
三十路に見えない美貌と、肌。
もともと薄いのか、ひげも目立たない。
しかし、柔和な印象とは裏腹に
しっかりとした指先と体躯だった。
「お待たせ」
そう言って、高槻はことりの向かいのソファに腰を下ろした。
「何の用事でしょう?」
「これを、読んでほしいんだ」
そう言って、ことりに今しがた印刷した数枚の紙を渡す。
みれば、題名(仮)、登場人物、といった文字が見える。
「…これって」
「プロットだよ。作品自体は書き始めているんだけど、
僕はもっと、リアリティを求めたい」
読んでみて、と言われて
ことりは思わず原稿に目を落とす。
現役の売れっ子作家の、プロットを見られるなんて
それこそファンからしたら喉から手が出るほどにうらやましいことに違いない。
ことりは、ドキドキと高鳴る胸を押さえて
その原稿を見た。