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呪いのしるしを、君の体に。
第8章 8
「よかった、これで、君に心置き無くいたずらができるよ」
満足そうな笑顔にああそうですかとことりが頷こうとして
そして気づいた。
「ちょっと待って。心置き無くいたずら?」
「うん。ほら、だって、ここをよく見て。
書いてあるでしょう?」
紙を渡されて見ると、そこにはとんでもない事が書かれていた。
「雇い主のいうことはなんでも聞く事…。
それが肉体関係だったとしても了承する事…。
いや、ちょっと待って、こんな小さい文字じゃ卑怯!」
「ダメダメ、もうことり君は判子押したからね。
作品づくりのために、僕に体を差し出すんだ」
満足そうな笑みにことりは引きつりそうになりながら
もう一度、契約書をよく読む。
「え、そんな、だって…」
『怜央…どうしよう…』
このままでは、アルバイトという名の浮気だった。
でも、もはやことりにどうすることもできない。
「破棄したいかい、ことり君?
愛撫もない彼氏とのつまらない夏休みに戻るか
僕と高原の別荘地で素晴らしい高時給のアルバイトを選ぶか」
ことりは下唇を噛んだ。
お金とモラルとの狭間で、まさか自分が悩む日がくるとは思いもしなかった。
「そんな悩めることり君に朗報だよ。
ここ、よく読んで」
2枚目の、とてつもなく小さい文字の契約書の一部を
高槻がペンで線を引いてことりに渡す。
「肉体関係とは、挿入を含まない…。え、つまりこれって」
「そう、SEXはなしだよことり君。安心したかい?」
ことりはやっと息を深く吸って、吐く事ができた。
『これなら、怜央、大丈夫だ』
安堵したのも束の間。
高槻の手がことりの頬に伸びて
不意打ちにキスされた。
「ちょ、先生!」
つき飛ばそうとすると、高槻はニコニコと笑った。
「いいね、気が強いのも。
契約書見て陥落するか、僕との卑猥な日常に嬉しがってしまうのに、そうじゃないところが君らしい。
だけどね、挿入はないだけで、肉体関係はあることを忘れちゃダメだよ」
それに、と高槻が続ける。
「契約破棄は、違約金の対象だからね」
それは、これ以上にないことりへの楔だった。
強引な口づけとともに、ソファに押し倒され
息もできないほどに熱い舌先が、ことりの口内を這った。