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呪いのしるしを、君の体に。
第8章 8
「誰よ、あんた」
勝手に扉を開けた挙句に言われた言葉の意味を理解できず
固まっていると
その美女がことりを睨みつける。
「忍はどこよ?」
「えっと…」
「鈍臭いわね、あんた。
ここの家の掃除番? 早く忍呼びなさいよ」
固まっていると、高槻が「やあ」と涼しげな顔で出てくる。
思わずことりは彼を睨みつけた。
『こんなファンキーなお客くるなんて聞いてない!』
ムカつきすぎてガンを飛ばしたのだが、華麗にスルーされた。
高槻の姿を見るなり、その美女は急に甘ったるい声を出した。
「ちょっと、忍〜。
あたしの別荘に遊びに来るって言ったのに
ちっとも来ないじゃないの〜!
待ちくたびれて、わざわざ出向いちゃったわよ」
「あはは。ごめんごめん。
ちょっと忙しくてね」
どうぞ、と言われる前に
美女は靴を脱いですでに高槻の腕に絡みついていた。
『うっわ、なんなのこの女…』
ことりはげっそりして、そして高槻に目配せする。
「そうだ、松本さん」
「やだ、瞳って呼んでって言ったじゃない」
「あはは。呼べませんって、大地主さんのご令嬢を呼び捨てにしたら
それこそ首がすっ飛んでしまいますよ」
瞳と呼んでと媚を売った美女は
高槻の腕に絡みつきながらふてくされた顔をした。
「それでね、松本さん。
この子は新しいハウスキーパーです。
今日はこのあと1時間休暇を取ってもらったから、どうぞくつろいで行ってくださいね」
「わーい、ありがと、忍」
「じゃあ、君はまた後で」
高槻がそう言って美女とリビングへ向かった。
ことりは呆然としつつ、あまりのハリケーンっぷりに言葉を失い
毒気にやられて自分の部屋へと戻った。
階下からは、瞳の媚び満載の声が響いてくる。
ムカムカしたので、音楽でもかけようかと思ったところ
携帯に高槻からメッセージが入っていた。
『大人しく書斎倉庫の入り口の椅子に座って、お昼までじっとしていられたら
角のおしゃれなテラスカフェでランチをご馳走するよ』
売りことばなのはあからさまだった。
「なんなの、2人して嫌な感じ…
いいわよ、売りことばに乗ってやるわ」
そして、ことりはこの後
書籍倉庫で待機したことを後悔する。