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呪いのしるしを、君の体に。
第9章 9
「何がそんなに可笑しいんですか!」
「いや、だって、僕に面と向かって嫌いって言った女性って
ことり君、君くらいなもんだよ…。
ああ、可笑しい。見てよ、涙出てきちゃった」
釈然としないことりをよそに
高槻は笑いながら部屋へと入っていく。
「準備して行こう、ランチが終わってしまうから」
ことりは慌てて自分の部屋へと戻ると
サクッとカバンを用意して
角のランチの美味しいレストランへと向かった。
お洒落な店内は個室風になっており
その中でもより一層、カップルが好みそうな
密室感が強い席へと通された。
それは、高槻が好んで座る席で
一般人から隠れたい時にはそこに座るようにしていた。
大きな窓からは手入れされた庭が見え
夏の清々しい日差しが美しかった。
「ことり君、まだ悩むのかい?」
「当たり前です先生。
こんなに美味しそうなのに、選べませんよ?」
レストランでメニューを睨んで10分。
高槻は楽しそうにそんなことりを見ていた。
ランチプレートは2種類。
しかし、ドリンクやデザートの種類が多くて
全く選べなくなっていた。
「プレートは2人で半分ずつにすればいいだろう?
飲み物は、決められないなら2つ頼んでもいいよ」
「やめてください、選択肢が増えて逆効果です」
「そうやっていると本当に普通の女の子なのにね…」
「どう言う意味ですか⁉︎」
そのことりをよそに、高槻はウェイターを呼んでしまった。
「あ、先生のバカ!まだ決まってないのに!」
「人は急かされると、すぐに決められるものだよ」
そうして、ことりは渋々と気になっていたケーキと飲み物を選ぶ。
そして、悩んでいたものを高槻が頼んでくれた。
「ほら、決められた。あとで半分あげるから、ね?」
「不気味なくらい優しくて気持ち悪いんですけど…」
「僕のことを気味わるがる女性は君くらいだよ」
普通は、紳士とみんな呼ぶんだけどね。
と高槻は軽口を叩いた。
確かに、世の中の女性が見たら
それはそれは素晴らしい男性に見えるに違いないが
どうにもこうにも、一筋縄ではいかなすぎて
ことりはいつも高槻のペースに飲まれていた。