この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
呪いのしるしを、君の体に。
第9章 9
「先生、ケーキはお預けですか?」
店を出てすぐに、ことりが口を尖らせた。
高槻はその仕草にたまらず唇を塞ぎかけて
寸前で止めた。
「声を我慢できなかったからね、お預けですよことり君。
それとも、僕の前で下着で食べる姿を見せてくれるなら買ってあげてもいい」
「聞いた私がバカでした!」
ことりはまたもや顔を真っ赤にした。
せっかくの良い雰囲気なのに、高槻と一緒だとどうもデートという感じもせずだった。
『怜央ときてたら、楽しかったかな?』
一瞬そう考えて、ブンブンと首を横に振った。
今、怜央の事を考えると、やるせない気持ちになってしまう。
「ことり君、彼氏のことでも考えてた?」
歩きながら顔を覗き込まれ、しかも、ズバリと当てられてしまい
ことりは絶句した。
「何で、わかって…」
「あーあ、心外だな。確かに、彼氏と比べたら歳はだいぶ上かもだけど。
でも、その彼氏、僕より良い男なの?」
手を繋がれて、口付けされながらそんな事を上目遣いに言われる。
ことりはスマートな身のこなしにドギマギしつつ
その手を振りほどこうとした。
しかし、その手を高槻は握りしめたまま、絶対に離そうとしない。
「つきあって数ヶ月もたつのに、君のことをイカせてあげられない男に
僕は負けちゃうのかな、ことり君?」
耳元で囁かれて、ことりは手を離すのを断念した。
耳まで熱くなるような、恥ずかし言葉を
すらすらと言えてしまう高槻に、ことりはタジタジだった。
「…勝ち負けじゃないじゃないですか…」
「男は勝ち負けにこだわる生き物なんだよ」
「でしたら、先生の圧勝ですよ。ご心配なさらずです」
「ほんと!?」
「本当ですよ、背も高いし、イケメンですし、なんで私なんかにいちいち構うのか気がしれないです」
じゃあ、帰ったら教えてあげるね。
上機嫌な高槻はそう言って鼻歌を歌いながら
しかし、しっかりとことりの手を握りしめたまま帰宅した。