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呪いのしるしを、君の体に。
第9章 9
『これは、拷問か…』
高槻は自分の部屋へと戻ると
扉の内側でふと息を吐いた。
自分でも、これほどまでに強烈に野蛮な感情が自身の中にあるとは思ってもみなかった。
もし理性や制約がなければ、あのまま押し倒していたに違いなかった。
彼女は、ことりは、高槻にとって毒に近かった。
うぶな反応がいちいちカンに触るのだ。
イライラしてしまう。
彼氏がいるのに、と言いながらも、高槻の愛撫に反応する姿は
たまらなくいじらしいのと同時に、高槻を苛立たせた。
その苛立ちの正体は分かっていた。
それは彼女を欲するトゲトゲした欲望だった。
彼氏がいるなら辞めればいい。
自分がいいなら堕ちればいい。
なのに、どっちつかずのままの姿にイライラしていた。
ことりがお金目的で我慢しているのも分かっているのに
そのことりの素直すぎる身体の反応、
お金目的じゃないのではないかと思わせてしまうそのうぶすぎる反応に
高槻はいつも脳天を揺さぶられた。
捕まえたカナリヤは
想像以上に官能的だった。
ことりをどっちつかずにさせたのは他でもない自分自身だと分かっているから
尚更に自分にも苛立ち、そして余計に彼女を困らせていじめたくなった。
「これは、とんだ作品になるな…」
執筆するのが楽しみだった。
この欲望と渇きの果てに見えるものを探るべく
人間の心情と彼女の反応を楽しみつつ書かれる物語に
高槻は興奮と冷静のバランスを保つのにいっぱいになっていた。
この後も、どんなドギマギした顔をしながら
コーヒーを出してくるのかを想像するだけで
高槻はどうしようもないほどにこみ上げてくる感情を抑える。
案の定、ギクシャクしながらも
高槻にコーヒーを出して、顔を真っ赤にしながら
ことりは自室へと避難した。
そのあまりにもプロット通りの反応に
高槻は思わず笑みが溢れて、そして淹れた濃すぎるコーヒーを飲みながらソファで目を閉じた。