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呪いのしるしを、君の体に。
第9章 9
「ことり君、これポストに出してきてくれる?」
夕飯何作ろうかと冷蔵庫の前で考え込んでいることりに高槻が話しかけた。
外はまだセミの鳴き声が騒がしく
太陽がさんさんと降り注いでいる。
「いいですよ。あ、ちなみに、今日の夕飯
パスタかリゾットで迷ってるんですけど、どっちがいいですか?」
「うーん…ことり君が良いなぁ」
冷蔵庫にことりを押しつけてそう耳元で呟くと
案の定、張り手が飛んできた。
分かりきっていたので、ことりの手を封じるのはたやすかった。
「いけしゃあしゃあと…。
どうしてそう、恥ずかしげもなく歯の浮くような台詞が出てくるんですか?」
「僕は本当のことしか言わないよ?」
「ポストから帰るまでに考えておいて下さいね!
さもなくば夕飯はありません!」
ことりはべー、と舌を出す。
すかさずその舌を高槻は指で摘んだ。
驚いたのはことりの方で、完全に防御が遅れる。
「んんっ!」
ついでに、摘んだ舌に自分の舌を沿わせた。
たっぷりの唾液をつけて。
「悪い子だな、ことり君。
雇い主に反逆的な行動は慎まないと…。
ほら、お仕置きだよ。飲みなさい」
そのうちに、これはお仕置きではなくて
ことりが欲しがるものに変わる…。
確信している高槻には容赦がない。
「んんっ…」
「飲み込むなら舌を解放してあげるよ?」
真っ赤になったことりが小刻みに頷く。
もう一度唾液を与えて、指を離した。
喉仏に指を沿わせて、飲み込むのを確認する。
「…もっと欲しい?」
頭の中がパンクしたことりは
引っ叩くこともできずに首を横に振って高槻から逃げた。
「…夕飯、考えておいて下さいね」
逃げるように封書を持って玄関へと走り抜け
階上からにこやかに見ている高槻を見つけると
今度こそはと言わんばかりにべーっと舌を出して
外へと駆け出していった。
「あーぁ、おっかしいの。
あんな物欲しそうな顔するなんて、調教しがいがあるだろ」
ご満悦な高槻は、執筆のためにまたもや自室へと戻っていった。
そのひどく満足そうな顔は、たぶん今まで誰も見たことがないものだった。