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呪いのしるしを、君の体に。
第9章 9
「先生、言ってくださいよね、あんな若い子そばに置いてまたなんか噂されたらどうするんですか」
「どうもしないし、大丈夫だよ。彼女は働き者だし、一生懸命仕事をしてくれる」
「ですが、どう見たって大学生でしょ? 何かあったら俺だって銃口向けられるんですからね」
「もみ消しは得意だろ、金城君」
「そうですけど、どう見たって美人だし、噂になるようなことは控えて下さいよね」
ことりはその会話を聞いて、ああ、やっぱり高槻は人気なのだな、と再確認した。
ハウスキーパーの1人や2人いたって、大した噂になるはずもないのに、人気があると若い女性がそばにいるというだけで噂になるのかと思った。
「はい、水羊羹です。ここの美味しいですよ。
先生は羊羹きらいだからこっちです」
金城にはこの界隈で評判の和菓子屋の水菓子を、高槻には一口サイズのミルフィーユチョコを出した。
「あれ、羊羹きらいだって言ったけ?」
「いえ。でも見てれば分かりますから、マニュアルに先生の好き嫌いリスト追加して書いておきましたよ」
「さすが、ことり君」
「だいいち、嫌いなものがあるんだったら、先にマニュアルに書いて置いて欲しいですけどね。
あと、夕飯はリゾットにします。私が食べたいので」
ことりがピシャリと言い放つと、2人のやり取りを聞いていた金城が我慢できないというように笑いはじめた。
そのあまりにも大きな笑い声に、ことりは思わずびくりとした。
高槻は、はあ、とため息を吐く。
「いやあ、ごめんなさい。先生、この子なら心配しなくて大丈夫っぽそうですね!
先生にこんな風に口聞く女性、俺、初めて見ましたよ!」
「だから、大丈夫だって言ったでしょう」
金城はことりにニカッと笑って、「水羊羹美味しいよ」と伝えた。
ことりはなんだか久しぶりに心が弾んで、「良かったです」と伝えると、別の仕事へと戻った。
2人は1時間半ほど、仕事の打ち合わせをしたようで
その間ことりは風呂場の掃除と洗濯、夕飯の支度を始めようと思った頃に金城が帰る気配がした。