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第4章 4

背後の男は見上げるほど高く、顎にうっすらと髭を生やしていた。

「あ、りがとうございます…」

奥二重の涼しげな瞳に太いフレームの眼鏡がよく似合っており、知性を漂わせている。
輪郭は面長で鼻は高すぎず、低すぎない美しい流線を描いていた。
『もしかして……死んでなかった？　私の王子様？』
妄想力の強い彼女は胸の鼓動を最加速させてしまっていた。


「へぇ。じゃあ意外と近いところに住んでますね!!」
「どこかですれ違ったこともあったりしてね」

食事のフリータイムは迷わずにその彼の元に向かっていた。
待っているだけでは幸せは掴めないということは『いつかは結婚できると思い込んでるあなたへ』を読んで学習済みだ。

彼の名前は海藤蓮司（かいとうれんじ）。年齢は四十歳。そして今住まいは比較的近いというところを確認したところだった。