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知代の性活
第9章 十二月 歌うためなら、性を、体を
 店の名前は『AMカフェ』という。「A」は秋葉原「M」はミュージックの頭文字だ。
 中では喫茶軽食を提供するスペースもあり、名前の通り、ライブを見ながらお茶を楽しむことが出来る。
 
 秋葉原の中央通りを末広町方面にしばらく歩き、路地を一本入ったところにある雑居ビルの一階に『AMカフェ』はある。
 プロデューサーは重倉という、まだ三十代の若い男だった。
 何でも、ストリートライブが好きらしく、方々で見てはこの店に出演させているらしい。
 白いワイシャツの上に羽織った革のベストが気障な雰囲気を醸している。
 長い髪に高そうなサングラス。

 どちらかと言えば、知代の苦手な種類の見た目だが、何人ものストリートミュージシャンを出演させている実績もあり、チラシを作ってもらった恩もあり、チラシ配り等、出来るだけ店の手伝いをしようと思った。

 用意された衣装は、大人しめとはいえメイド服だった。
 秋葉原ということを考えればメイド服はそれほど不自然ではないかもしれない。実際あちこちでチラシを配布しているメイドを見かける。
 秋葉原でのチラシを配るなら、メイド服が目印代わりだ。

 だからそれ自体に文句はないのだけれど。

 知代はスカートの裾を押さえる。

 このスカートの短さはどうだろうか。
 油断すると、尻の下のほうが見えてしまいそうだ。

 恥ずかしくてモジモジしていた知代だったが、自分の告知もしなくてはいけない。
 思い切って通行人に声をかけ、チラシを差し出す。

 チラシを受け取ってもらえて、しかもライブに来てくれる、と言ってくれた人に思わず深く頭を下げてしまい、その際に後ろを歩いている人が自分の尻の辺りを凝視しているのに気が付いた。

 スカートが短いから、あまり頭を下げると下着が見えてしまう。
 そう気付いてから、より恥ずかしさが増したが、壁を背にしてなんとか頑張った。

 恥ずかしそうに壁に寄り、短いスカートの裾を気にしながらチラシを配っている知代は、秋葉原を歩く男性の目を引いた。
 結果として、たくさんのチラシを受け取ってもらえて、重倉にも満足してもらえた。
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