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知代の性活
第3章 六月 断れなくて、自慰
 数日後、長田から電話がかかってきた。
 感想を聞かせてほしいから、会社まで来てほしい、という。

 
 そして、今日。
 知代は使えなかったと素直に謝ろうと、バイブ数本の詰まった箱を持ち、長田の会社へと向かう。

 ウトウトして、幼い頃の夢を見ている間に、目的の駅に近付いていた。

 長田の会社はいわゆる「アダルトメーカー」で、知代はそこに行くだけでも相当の勇気を必要とした。
 着いてみれば綺麗なビルの中の、綺麗なオフィスで、少しだけ安心した。

 迎えてくれた長田は相変わらず冴えなくて、他にも感想を聞かせて下さい、と数人の社員が同席したが、どの人も優しそうで、また少し安心する。

 小さなオフィスの一角にある、来客用と思われるソファーセットに座り、正面に三人の社員、長田は隣に座った。
 皆、知代の感想を心待ちにしているようだ。
 お茶をすすめられながら聞いた話では、新しく会社を立ち上げ、その会社の第一弾の商品で、最初のモニターが知代だということだった。

 知代は困ってしまった。
 社員は長田をはじめ、皆いい人だった。しかもこの新商品への期待を嫌と言うほど感じる。
 素直に「使っていない」と白状しようとした知代だったが、何だか申し訳ないような気持ちになってしまった。

 それでも何とか、実は使っていない、と伝えることが出来た。

「…そうなんですか?」
「はい…すいません」
「あの、使わなかった理由とか聞いてもいいですか?」

 これはまた困る質問だった。

 使う気がしなかったからなのだが、そう正直に言っていいものだろうか?
 迷った挙句、知代は「使い方が分からなかったので…」と答えた。

「失礼なことを聞くようですが、もしかしてあまり、こういう経験がなかったりしますか?」

 恥ずかしかったが、長田や社員の期待を裏切ってしまった申し訳なさを感じて、知代は素直に頷いた。
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