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キミといる場所
第3章 過去と現在(いま)
木枯し1号が吹き、冬のコートを出さないとなぁ…
なんて考えたりしながら、現場から戻る。

ドアを開けるとコーヒーの良い香りがした。
相田のデスクにcocoliの持ち帰りコーヒーが置かれていた。

「あ、おかえりなさーい」

花穂ちゃんのデスクにはタンブラー。
すっかり常連だなぁ。

「おやつタイムしてましたぁ」

「美味いな、これ」

貴子さん手作りのマフィンをモグモグしながら相田が言う。

「菜緒さんの分、買ってなかったんで行ってきます!」

マッハの速さで出て行った。
猟犬並みのスピード。
恋する乙女は肉食系だなぁ。

「こりゃしばらく帰って来ねぇな」

苦笑しながらも、それを特にとがめない優しさと鷹揚さを持つ相田に、
私はずいぶんと助けられた。
刺激の少ないこの街で、ひたすら仕事に打ち込むことが私を再生してくれている。
感謝しきれないほどの恩を私の仕事で返せるのならば、
徹夜だろうとなんだろうと苦ではない。

「ただいま帰りましたー」

図面を抱えて帰社した山田くんに

「悪いけどcocoliに花穂ちゃん迎えにいって」

猟犬が再びの狩りに出ないよう指令を出す。
山田くんは、心得た!とばかりに笑いながら、
閉めたばかりのドアから出ていった。

「あ、菜緒ちゃんね、例の個人邸から土曜日のお呼びだし」

「んがー、またですかぁ」

いま私が抱えている案件、
個人住宅の施主さんはデザインの変更希望が多く、
本決定までなかなかたどり着けないでいる。
「家は一生の買い物だから思う存分悩んでください」
と最初に言ったものの、毎週末に呼び出されるので私は休みが取れずにいた。
でもそれも、恩返しの一環だ。
ありがたく休みぐらい献上しようぞ。

そんな気概も、一生の夢と予算という現実に揺れ
行ったり来たりを繰り返す施主との打ち合わせに、
脆くも崩れそうな土曜の雨の夜。

事務所に戻ってぐったりとデスクに伏す。
暖房を入れる気力もないほど疲れていた。
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