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キミといる場所
第3章 過去と現在(いま)
噂は社内に広まり、退職せざるを得なくなった。
2年間付き合った笹倉との終わりもそうだ。

傷ついた私を一生懸命慰め癒そうとする笹倉を想い、
事件以前と変わらぬ態度でいたつもりだった。
笹倉もそんな私に寄り添おうとしてくれていた。

だが、セックスとなるとどうしてもあの夜が思い出されてしまう。

背後から押さえつけられた時のチカラの強さ。
張られた頬の痛み。
無理やり挿入された時のおぞましさ。
汚い水をカラダいっぱいに注がれた惨めな気持ち。

それでも私は抱かれようとした。
あんなことはなんでもないことだ、と自分に解らせたかった。

そんな私の心もカラダも、笹倉には受けとめきれなかったのだ。


そして私はこの街に来た。
何もかも新しくやり直せ、と誘ってくれたのは相田だった。

「俺な、故郷で独立することにしたんよ」

そう言って相田が電話をかけてきたのは、
事件から1年半ほど経った頃だった。

げっそりと痩せた私を見て、
相田は例の困ったような優しいような顔で

「なーんの刺激もないトコだけど、意匠担当として来てくれないかなぁ」

大した実績もない私に、
わざわざ声をかけてくれた相田の優しさ。
この恩に報いたい、と5年間ひたすら仕事に向き合ってきた。

のんびりとしたこの街で、思い出は封印されたはずだった。
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