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キミといる場所
第7章 変化の先に待つものは
確かに…ゾッコンどうかは定かではないが、
木戸社長がなんとなく好意を寄せてくれているのかなぁ
ということは感じていた。

たとえば今回のように、
何気なく言った一言を覚えていてくれたり、
現場に行くといち早く迎えてくれたり、
打合せの時に視線を感じたり…。

日に焼けてがっしりとした体躯。
短く刈り込んだ髪。
ハキハキとした物言い。
よく食べよく飲みよく笑う、
実に健康的な人だ。
木戸建設はこの若社長になってから、
仕事の質が上がったと、周囲の評価は高い。

「若社長と付き合う気ないんですかぁ」

「あるわけないでしょ!取引先だよ」

「えー、いいじゃないですか。
若社長、いい旦那さんになりそうなのにぃ♪」

ありえない。
結婚どころか付き合うことすら考えたことがない!

「まぁ、家庭におさまる菜緒さんって想像つかないですけどね」

そんなことは自覚している。
なんせ調理道具が3個しかないからね。

そんな私でも…いつか誰かと共に暮らし、
幸せを分かち合い苦難を乗り越え、
穏やかに今を振り返る時がくるのだろうか。

その時隣にいてくれるのは…。

「あ、若社長!」

花穂ちゃんの声で外に目をやると、
木戸建設と書かれたバンが停まるのが見えた。
スーツ姿の木戸が降りてくる。

「あれぇ、さっきは作業着で来たんですよぉ。着替えてるぅ」

なんとなく嫌な予感…。
と言ったら失礼か。

ガラス張りのドアを開けて

「お世話になります。またお邪魔しました」

それはいつもの、
大きすぎるほどの陽気な声ではなく、
まるで面接に来た受験者のようだ。
花穂ちゃんもそのただならぬ気配に背筋を伸ばしたほど。

「こんにちは。先ほどはお土産をありがとうございました」

私はいつも通りの態度を崩さず挨拶をした。
花穂ちゃんは借りてきた猫のように、
デスクでパソコンに向かうふりをしている。
耳がダンボだ。

「たびたびお邪魔しまして…すみません」

「現場で何か不具合でも?」

「いえ、そうではないのですが…」

必要とあらば歯に衣着せぬ口調で、
年上の職人にも厳しい言葉を投げる木戸とは思えない神妙さだ。

「高瀬さんにお話が…」

予感的中?
あぁ面倒な事になりそう。
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