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キミといる場所
第7章 変化の先に待つものは
世間の時から数秒遅れてcocoliが動き出したのは、
入口付近に座っていた老人のひと声だった。

「よぅ兄ちゃん、男前だねぇ」

若いってのはいいねぇ…と呟きながらコーヒーをすする老人に、空気が解けるのを感じる。

「す、すみません…先走ってしまいまして…」

さっきのプロポーズ発言とは打って変わった小さな声で謝る木戸社長。
違う!そここそ大声で言ってくれよー!

絶対誤解されたに違いない…。
恥ずかしさと居たたまれなさで消えてしまいたいよ。

深呼吸してから姿勢を正した。

「お気持ちはありがたいのですが、私には想う人がいるんです」

長谷川くんに聞こえますように。

「社長のことはとても良い方だと思っていますが、
これから先も…お取引先という関係以上にはなれないかと思います」

木戸社長の顔に落胆の色が浮かぶ。

ここに来たばかりの頃、
慣れない土地と慣れない現場で右往左往する私に、
丁寧に進行と段取りを説明してくれたのも
美味しい地酒のお店を教えてくれたのも
この人だった。

「申し訳ありません」

深く深く頭を下げた。

「あ、ややや、高瀬さん!頭あげてください!」

見たこともないくらい狼狽しながら

「謝るのはこちらの方で…
お仕事中に呼び出して…中学生かっつう話ですよね」

「体育館裏ってことですね、ここは」

わはは!といつものように笑ってくれた木戸社長にほっとした。

「そういう切り返しの早さとか、仕事でももちろんそうだけど、高瀬さんと話すと楽しくてね」

いつものような口調に戻った。

「こんな嫁さんがいたら、俺もっと頑張れるなぁって、いつも思ってたんですよ」

「それで先走りですか?」

「あはは、いろいろすっ飛ばし過ぎました」

思い出したようにコーヒーカップを持ち上げ、
まるで水のようにごくごく飲み干した。

「そっかぁ…想う人か」

「ごめんなさい」

そのコーヒーは、想う人が淹れました。
そしてすぐそこにいる想う人にも伝わるように。

「本当にごめんなさい」



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