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キミといる場所
第11章 暖かな涙
「心配して来てくれたのは嬉しいけどね。
なんなのその格好は」

「私に感染ったら、お店開けられないでしょ」

ニット帽二重のマスクに、なぜかゴーグル姿の貴子さんは、
ほい差し入れ、とまだ湯気のたつ料理を置くと、

「そんじゃ、お邪魔さまー」

と帰っていった。


ありがたく頂いてから長谷川くんを着替えさせ、
シーツを替えたベッドに寝かす。

「さっきの続きは?」と甘えてきたが、
押し戻す。
よく考えたらこの人、病人だった。
安静第一であるよ。

それに…間違いなく私もインフル感染しているはず。
キチキチに詰め込んだスケジュール、
どう調整したものか。
頭が痛い。

頭が…

痛くて…

寒気がする…。


「はい、インフルエンザA型ね」

昨夜駆け込んだ病院に、
今度は長谷川くんに連れられて来た。
ブランケットでぐるぐる巻きにされた私は
まるで人間のり巻きである。

「1週間の出勤停止だって」

なんだよぅ、その嬉しそうな顔はー。

「僕も同じく店に出られないし」

1週間ふたりきりですねー、
って喜ぶ長谷川くん。
意外と甘えキャラだったのだな。
可愛いけど、私は今、それどころではないのだよ。
やっと前進した私たちだったが、
その甘さに浸る余裕が私にはなかった。

「カ、カラダの節々が痛すぎるぅ…」


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