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十字路の上で
第2章 ありふれた日常

「邦彦、俺も昨日の応用言語のプリント貸してくんない?」
春の横に座り、ニコニコと声をかけてくるのは橘 馨(タチバナ カオル)。春の彼氏。
身長185cmが羨ましい。
「いいけど、俺も寝落ちしたから途中抜けてる」
「えー、それは困るな」
こちらの返事に笑顔で不満を言う。
「俺ちゃんと書いてるで!見せたるやん」
そのやりとりを聞いて、馨から1席分空けて座っていた関西出身の関根 俊哉(セキネ シュンヤ)が口を挟む。
「関根の字は読めたもんじゃないから遠慮しとくよ」
笑顔でバッサリ切る馨は、常にニコニコな癒し系に見せかけて現実主義の毒舌家。
「うっわ。絶対もう貸したれへんからな」
その毒牙に毎度やられる可哀想な関根。
馨とは対照的に関根は背が低く小柄だが、無造作なヘアスタイルや服の着こなしのセンスが良くいつもお洒落だ。
そのやりとりに女2人が顔を見合わせてくすくすと笑っている。
「そういえばオネェは?来ないのかな?」
「ギリギリになるって馨にLINE来てたよ」
真実が首をかしげると、春が腕時計を見ながら答えた。
オネェとは、同じクラスメイトで俺達がよく行動をともにするもう1人のメンバー。
「もう結構ギリギリだよね」
「あっ、来た来た」
タイミングよく、関根が講義室の入口を振り返って手をあげた。

