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十字路の上で
第2章 ありふれた日常

こちらに気付いたひょろっと線の細長い男が、かぶったハットを抑えながら足早に階段を降りてくる。

真実が2席ほどずれたので、それにならって奥に詰めると、さっきまで俺が座っていた席にドカッと腰をおろして息をついた。


「あ〜良かった、間に合った!」

「はよー。チャリんこパンクしたんやって?」


田中 颯太(タナカ ソウタ)。性別男。
ニックネーム ”オネェ”。
その由来はもちろん。


「そうなの!朝からもう散々〜。でも!修理屋のお兄さんが超タイプだったのよね!」


このキャラクターである。


「あ、でもでも!アタシの1番は邦彦だからね〜」


と、頰に手を当ててこちらにバチっとウインクを寄こす。

見た目は男、心は常に恋する乙女?

もう慣れっこになった颯太から告白に「はいはい」と適当に答える。


「結構本気なのに」


唇を尖らせながら、脱いだハットをうちわ代わりにパタパタと仰ぐ颯太は、一見スラっとしていてツーブロックの短い髪が似合う好青年。


本人曰く、高校までは普通に女性が恋愛対象だったが、ある男性との出会いをきっかけに自分で認識したそうだ。

だからそれ以降は、タイプだったらどっちもOK!だそうで…いわゆるバイセクシャル。

偏見はないつもりだが、世の中いろんなヤツがいるんだな…というのが正直な感想である。


選択課目は別れるが、同じサークルに入ったことで何かとこの6人で行動することがいつの間にか当たり前になっていた。

気のおけない大事な仲間だ。

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