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十字路の上で
第1章 誰でもいいから

「まだいいじゃん…もっかいしよ?」


そう言ってあたしを抱きすくめ、髪に顔をうずめる。


「ちょっと…時間ないから。
汗もかいてるし、ヤだって」


カーテンの隙間から漏れ入る朝日で夜に比べジワジワと上がっている室温。

それとともに昨夜の事情も合わさってベタついている自分の身体が不快で胸を押し返すが、ぎゅーと力を入れられて引き離せない。


「そんじゃあ…」


ふと力が弱まったかと思ったが左腕はしっかりと腰を捕まえたまま、顔と右腕を上げベッド横のサイドテーブルに手を伸ばす。

ピィッという聞き慣れたエアコンの起動音が聞こえ、あたしは「はぁ…」と、ため息をついた。

諦めて力を抜くと、その瞬間くるっと体を入れ替えあたしを下にして顔の横に手をつき、微かに笑いながらこちらを見下ろす。

こちらもジッと男の顔を見上げる。
男にこんな美が必要なのかと思うほどに整った綺麗な顔。

すっと通った鼻筋。
いつもはバッチリとセットされて後ろに流されている艶のある黒い前髪が、いまは切れ長だけど大きくはっきりした二重瞼の瞳にかかり、わずかに持ち上げられた口角はこの男の余裕と自信をしっかりと表現している。
 

「お前…ほんと綺麗な顔してるよな」


いま自分が思っていた全く同じことをそのまま言われ思わず苦笑する。


「それは彰人(アキト)のほうでしょ」

「まぁ確かに俺はイケメンだけど」


謙遜することなくニヤッと笑う彰人。
顔にかかった髪を一房すくい、王子様のように髪にキスをする。


「真実ほどいい女も見たことないぜ」


彰人のこうゆうところ、嫌いじゃない。


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