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十字路の上で
第3章 友情と愛情

「この後も誰かと会うんでしょ?」
「…うん」
「邦彦は知らないんでしょ?」
あたしはまた苦笑する。
邦彦にだけは絶対に知られたくないことだった。
「知ったら心底軽蔑されるだろうね」
「軽蔑じゃなくて心配でしょうよ。ほんと真実こそもったいないわ。何でもっと自分を大事にしないの?」
呆れたように言ってから、グッとこちらに詰め寄る颯太。
「あはは。今日珍しいね。さっきから質問責めなんだけど」
1年の中頃から、颯太だけがあたしの夜の生活に気付いていた。洞察力があるのだろう。
『アンタ、夜1人じゃいられないんでしょ?』
突然前置きもなく言われて、何も言い返せなかったのが肯定になってしまった。
でも咎めることも言及することもせず、周りにも話さず、ただ空いてる夜は飲みや遊びに付き合って見守ってくれていた。
そんな颯太の懐の深さをあたしは尊敬しているし、本当に感謝している。
「んー、なんていうかさ。こないだ、彰人先輩達と食堂で会ったじゃない?」
「うん」
「あの時は真実と彰人先輩がお似合いって言ったけど、やっぱり真実が幸せになれるのは邦彦なのかも?と思って」
「あはは、何それ」
「だって邦彦をちゃんと見てれば、真実が特別なのわかるじゃん?
別にあの女が彰人先輩に相応しいってわけじゃないわよ?あの女と真実、どっちが相応しいかって言ったら間違いなく真実だから」
「はは」
本気だと分かる言葉がくすぐったい。
でも間違ってる。
邦彦はあたしのことが好きで特別なわけではない。
「あのさ……聞いていい?」
珍しく、遠慮がちに颯太がこちらを見る。
あたしは首をかしげた。
「なぁに?」
「真実の好きな人ってどんな人なの?
邦彦でもダメって、どんなけのスペック?」
「あぁ。んー…」
颯太に言われて思い浮かべる。
穏やかな優しい笑顔。
ゆっくり話す低い声。
頭を撫でる大きな手。
「もうホントにね、ずっと好きで好きで…」
色々なことを教えてくれた。
一緒にいると陽だまりのような、心が暖かくなるあの気持ち。幸せな時間。

